2011年12月アーカイブ

アドラーの言葉

2006年の埼玉総会で、「もう一度育児を考える」というシンポジウムをやりました。そのとき、ジェーン・ネルセンさんの『PD』こと、『POSITIVE DISCIPLINE (積極的子育て)』を副読本として、読んでいきました。

『PD』の2章「SOME BASIC CONCEPTS(基本的な考え方)」の中の、 「5 SOCIAL INTEREST(共同体感覚)」の中に以下のように書いてありました。


・・・・引用はじめ・・・・・・・

 アドラーには、自称「14日間治療プラン」というものがありました。自分の指示したとおりに実行するなら、どんなに精神を病んだ患者でも、たった14日間で治してみせる、というのです。ある日、ひどい鬱の女性が、アドラーに診てもらいに来ました。アドラーは彼女に「私のアドバイスに従ってくだされば、ほんの14日間であなたの鬱を治してみせますよ」と言いました。

 「私にどうしろって言うんですか?」彼女は、あまり気乗りのしないふうで尋ねました。
 アドラーは「14日間、毎日ひとつずつ、だれか他の人のためになることをしてごらんなさい。そうすれば、14日後には鬱は全快していますよ」と答えました。

 彼女は断りました。「なんで私が他人のために何かしてあげなくちゃいけないんですか? 誰も私に何かしてくれるわけでもないのに」。

 アドラーは「まあね。あなたの場合は21日かかるかもしれないね」と冗談めかして答えました。そして、「他の人のために何かをしてあげようとは思えないのなら、もしするとしたら自分にできることは何だろうと、考えるだけでも考えてごらんない」とつけ加えました。アドラーは、他者のために何かをすると考えるだけでも、この患者が快方に向かうだろうとわかっていました。

 子どもに共同体感覚を教えることは、きわめて重要です。いくら学問を身につけたって、社会に貢献する一員になることを学ばないなら、何になるでしょうか。

・・・・・・引用おわり・・・・・


このシンポジストをきっかけにして、「人は、他の人に与えなければ、幸せになれない」、そして同じことを反対から言っていると思うのですが、「人は、与えられていることに感謝しなければ、幸せになれない」ということを、当時大学生だった娘たちに、パセージテキストを読み返しては、あの手この手で(笑)、もっと積極的に伝えようと思いました。

娘たちは、その後も平穏無事だったわけではなく、いろいろな人生の課題がやってきました。

長女は大学を卒業して、本人が希望していた、大学で学んだことが活かせる仕事につきました。彼女にとって、そこまでは順風だったのですが、いきなり現場でのハードな仕事に対処しなければならない状況の毎日となり、これは彼女にとって猛烈な逆風だったようでした。1年でチカラつき、ほんとのウツになりかけて退職したのでした。

とても心配だったけれど、アドラーの言葉がわたしをなんとかささえてくれていました。
しおれていた長女には、このアドラーの言葉を、やはりパセージテキストを読み返しては、あの手この手で(笑)、伝えつづけ、わたしだけでなく、家族みんなで彼女をささえたと思います。

長女が「ウツになりかけた」状態のときは、自分はダメだ~とか、誰もわかってくれない~などと、自己嫌悪&被害者モードになっていたのですが、毎日ひとつ、だれかのために役に立つことをしていくことで、人からよろこびや感謝がかえってくることによって、自信を取り戻し、心が世界にむかって開いてきて、そして、だんだんと元気になっていきました。まるで、しおれた花が、お水を吸って、だんだん生きかえっていくのを見ているようでした。

そして、彼女は別の職場で、人生を再スタートさせ、いまに至っています。あのしおれていた時期も、いい経験だったと、笑って話すようになりました。生きかえらせてもらったお水に、こんどはお返しするかのように、今は人々のためにたくさん働いています。そして、人々からもまた元気をいただいているようです。

彼女も、幸せになるために、そのときそのとき彼女が最善とおもう「決心」をしてきたと思いますし、これからもそうだと思います。いろいろ学ばせてもらっています。ありがたいです。

「人は、他の人に与えなければ、幸せになれない」ということ、同じ意味を裏返した「人は、与えられていることに感謝しなければ、幸せになれない」ということ、・・・言い方を変えれば、「あなたのチカラを使って、世のため人のために役にたつことをしなさい」や「当たり前のことに感謝しなさい」というようなことだと思いますが、・・・・これらを、子育てにかぎらず、すべてのことにおいて、これからも大切にして生きていこうと、やっぱり思うのでした。


【M.S(千葉) 2011年11月21日】