2012年4月アーカイブ

聞いてるわけじゃないよ

最近、友人の一人が愚痴聞き屋という商売を始めた。
あらかじめ携帯のメールで時間を予約してもらい、その時間に彼女に電話をかけて、30分から1時間愚痴を聞いてもらうという商売だ。

「愚痴聞き屋」でWEB検索すると、たくさんのお店のHPが出てくる、その宣伝文句に、「いらないアドバイスはいたしません」と書いてあって、思わず笑ってしまった。

以前、私は夫と時々喧嘩した。
ちょっと嫌なことがあって、話を聞いてもらいたいと思って話すと、途中で質問されたり、ありがたいアドバイスが返ってきたりするので、段々腹が立ってきて夫に対して怒ってしまったりしていた。
そうすると夫は、「アドバイスがいらないなら、なんでそんな話するの!?」と、逆ギレされた。

そんなことを繰り返しているうちに、ある日私は気がついた。夫は、私がアドバイスを求めて話をしてくると思っているんだと。

それで、次に話すときに「今から話すことは愚痴なので、アドバイスはいりません。ただ、聞いてもらえますか?」とお願いすることにした。
そうしたら、夫は「わかりました」と言って、話を最後まで聞いてくれた。
逆にアドバイスがほしいときは、「ちょっと相談があるので、アドバイスをお願いできますか?」ということにした。

それはもう10年くらい前のことだと思うけど、最近は夫も慣れたのか、私の話を黙って最後まで聞いてくれるようになった。相談があるときだけは、「相談したいんだけど」というと、とても頼もしいカウンセラーさんになってくれる。

先日のことなのだけど、私が「今度ワークで泊まる椿会館というところは、アメニティにヘアドライヤーとかシャンプー、リンスとかが書いてないけど、ついているのかなあ?」とつぶやいたら、いきなり夫がちょっと怒り出して、「そんなこと僕に聞かれたってわからないよ。電話して聞いてみればいいじゃない。そんな質問しないで、僕は答を持ってないから」と言った。

そういえば、前にも同じようなことがあったな、と思い出し、私は夫に、「私、淳ちゃん(夫)に聞いてるわけじゃないよ」と伝えた。すると、夫はちょっとびっくりした顔をして、「今のは独り言なの?」と言った。私は、「まあ、そんなようなものです」と伝えた。
夫は、「じゃあ、そんなとき、僕はどう返事すればいいの?」と聞いてきた。私は、「う~ん、『どうだろうねぇ』とか、『わかんないねぇ』とでも言っててくれればいいわ」ということを伝えた。

些細なことだけど、結婚して31年経っても、まだお互いがお互いを理解していないところがあるんだなあ、と思った。

夫婦が仲良く暮らしてゆくには、こういうなんでもないことをちゃんと話し合って、お互いの取り扱いマニュアルに書き足していくことが大切なんだなあ、とあらためて思うできごとだった。


【酒井 朋子 2012年4月11日】