2011年8月アーカイブ

第25回 国際個人心理学会( International Congress of Individual Psychology)に参加しました。

 
今年はアルフレッド・アドラーがフロイトと袂を分かってからちょうど100年目にあたります。それと25回目を記念して、今回はアドラーの生誕の地であるウィーンで開催されました。本大会は7月14日から17日の4日間ですが、12日にはアルフレッド・アドラーの追悼式典、13日にはプレ・コングレス・プログラムとして、ケースカンファレンスが開かれ、足かけ6日間にわたる大きな学会でした。私はそのうち14日から17日まで参加しました。
 
P7150964.JPGのサムネール画像 
会場はウィーン大学、アドラーの母校です。地下鉄のショッテントア・ウニヴァジテート駅を出ると、プラタナス並木の向こうに大学が見えます。古い石造りの建物は頑健で、100年前にアドラーが通っていた頃からきっとあまり変わっていないのではないかと思われます。
  


 
大学の玄関を入ると広いエントランスになっていて、そこを突き抜けると、広い中庭に出ます。きれいに手入れされた芝生にベンチ、大きな樹の木陰、まるで公園の一角のようです。大学生のアドラーも、一人で思いにふけりながら、友人と議論をしながら、ここを歩いたでしょうか。



P7140948.JPG 
 






 

   中庭をぐるりとめぐる回廊には、過去に大きな業績を残したウィーン大学の教授たちの胸像が飾ってありました。その中でもひときわ大きなのは、世界で初めて胃ガンの手術に成功した外科医、ビルロート(Billroth)先生のものでした。1867年から長いことウィーン大学の外科教授を勤めていましたが、アドラーが学生だった頃にはもう亡くなっていたようです。

名誉教授として、作曲家のアントン・ブルックナーの顔のレリーフもありました。面白かったのは、アドラーのところで勉強したことのあるカール・ポパーの胸像です。ポパーは教授としてではなく、ただの「市民」としてそこに飾ってありました。彼もウィーン大学の卒業生で、そこで博士号をとりましたが、ウィーン大学の教授にはなりませんでした。なぜ彼がそこに飾られているのか、不思議です。きっと理由があるに違いありません。
 
エントランスの突き当たりの学会受付カウンター付近にいると、ICASSIで知り合った友達たちと出会いました。周りが静かなことをしばし忘れて、興奮しつつ挨拶をすませ、「会場はどこ?」「こっちじゃないかしら?」などどおしゃべりしながら開会式や基調講演の会場へと向かいます。

 
開会式は厳かな雰囲気で始まりました。まだ英語にあまり慣れてないこともあり(いえ、実力でしょう)残念ながら内容はあまり拾えませんでした。学会会長のガイ・マナスター先生が開会で歓迎のスピーチをするはずでしたが、今回は体調不良のため参加されませんでした。ミーハーながら、教科書を出している先生に会えなかったのはとても残念です。が、それ以上に彼の欠席には大きな意味があったのだと、後で知ることになります。

 
公式言語は英語、ドイツ語、イタリア語です。それぞれに同時通訳がつき、翻訳機を借りると自分の好きな言語を聞くことができます。私はほとんど英語で聞いていましたが、もちろん全部は聞き取れません。意味のわかる単語をつなぎ合わせて、どんなことが話されているか、大筋だけ追うのが精一杯でした。

 
午前のプログラムの間に、中庭の回廊でコーヒーブレイクがあります。学会のために特別にしつらえられたカウンターで、飲み物が一杯1ユーロ、ケーキやペストリーもひとつ1ユーロで買えます。このケーキやペストリーがもうたまらなく美味しいのです。ケーキは主にパウンド系のベイクドケーキ、ペストリーには甘いジャムやカスタードが焼き込められてあったり、シュトゥルーデルというウィーンの伝統的なパイもありました。おお、しかし、美味しいけれどお腹もいっぱいになるので、一度に一つしか試せないのがとっても残念でした。
 
  
それらおやつを手に、みなみな挨拶やおしゃべりをします。初日はICASSIの友達や先生方と挨拶したり、日本からの参加者ともお会いしました。約36時間ぶりの日本語会話にはどんなにほっとしたことでしょう。
 
 
今回日本からは、中島さん、山本さん、かきうちさん、私、の4人が発表者として参加しました。一般演題発表は毎日午後の3時間を使って行われます。初日は中島さん、2日目は山本さんと私、そして3日目はかきうちさんの発表がありました。午後の発表についてはまた別に書こうと思います。
 
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初日の夕方には、この中庭回廊で歓迎パーティーがありました。このパーティーの前に特別プログラムとして、アルフレッド・アドラーの孫のマーゴット・アドラー(アルフレッドの息子クルトの娘)のインタビュー談話があり、彼女もこのパーティーに参加していました。ちょっと猫背で顔の奥にある強い漆黒の目で、話す相手をのぞき込むようにしっかり見つめます。
 
写真は、マーゴット・アドラーとエヴァ・ドライカースと一緒に記念撮影をする中島さんです。



【大竹優子 2011年8月19日】