2014年11月アーカイブ

総会、その魔法 ~参加のすすめ~

10月17・18日、私は初めてアドラー心理学会総会に参加しました。20代のはじめにアドラー心理学を知り、それから機会あるごとに私の人生を一変させるような素晴らしい講義やワークに参加させていただいてきましたが、今回の総会参加はその中でも特に印象深かったので、参加録を書いてみたいと思います。

私がアドラー心理学の仲間に入れていただいて15年以上は経っていると思いますが、私はその間、一度も総会に参加したことがありませんでした。一度も参加したことがなかった理由は「総会って交流会みたいなものかな?なにかを教えてもらう場じゃなさそうだから参加しなくていいかな。」と自分勝手に想像して自己完結していたためでしたが、今回の総会では、「エピソード分析」についての講演とグループワークがあることが分かり、今年の3月に大竹優子さんの「エピソード分析」のお話を聞いて以来、もっと知りたいと思っていることの糸口が何か見つかるかもしれないと思い、初めて総会に参加することにしました。

参加すると決めてからは、家事や育児、そしてパートの仕事をどうやって調整していこうかと色々と考えました。どの発表も聞きたかったのですが、その中でもとりわけ夜にある「自助グループともしび一家~やってみよう!グループでエピソード分析~」にぜひ参加したいと思っていたので、とても迷いましたが2歳の娘を初めて実家で一人泊らせて、私は総会のホテルに宿泊することにしました。娘に了解をとってから、私の宿泊の予約も完了して、ほっとしたのもつかの間、その日から娘の激しい夜泣きが始まりました。数日経てば落ち着くと思っていましたがおさまらず、ひょっとしてと思い「ついていきたい?」と聞くと、泣きやんでうなづきます。総会まであと一日しかなかったので、急いでホテルに問い合わせると、和室が一室だけ空いているとのことで、娘も連れて参加することにしました。パートの仕事と家事を慌ただしく片づけ、夜泣きをせずにぐっすり寝て機嫌のよい娘と母を連れて、私は北九州にやってきました。

総会の会場につくと、数年ぶりにお会いする方たちや様々なワークでともに学びあった仲間たちと再会することが出来ました。そして、初めてお会いする方ともアドラー心理学という共通の言葉を使って、楽しく語り合うことが出来ました。

総会1日目のシンポジウムⅠ『楽しい自主グループ』では、シンポジスト三人三様の楽しい自主グループの在り方をお聞きして刺激を受け、私も知り合いに貸し出せるように、すぐに『Passage』のテキストを5冊購入しました。夕飯を食べてからは急いで娘をお風呂に入れ、少しだけですが娘といっしょに「地方区連絡集会」に顔を出すことが出来ました。娘には、折に触れてICASSIで出会ったアドレリアンの子どもたちの話をしていたからか、いつも元気いっぱい走り回る娘は驚くぐらい静かに座っていて、アドレリアンの集まる場所の雰囲気を感じているように見えました。

21時からは本当に楽しみにしていたグループで行うエピソード分析にメンバーとして参加させていただき、そこで初めてエピソード分析のアルゴリズムの図を拝見して、とても感激しました。それというのも2010年のICASSIやその後の由布院でのYvonne Schuerer先生のライフスタイル分析に参加させていただいて以来、「分析というのは名人芸みたいなもので、とても私にはできない。」と、これまた勝手に自己完結していたので、アルゴリズムを使って、みんなで行うエピソード分析に触れる機会をいただき、私にも出来ることがあると勇気づけられました。

2日目のシンポジウムⅡ『医療現場とアドラー心理学』でも、シンポジスト三人三様の医療現場でのアドラー心理学の活かし方をお聞きし、中でも横山先生の「身体に病気があってもハッピーに暮らしていくことが出来る(私の記憶違いで言葉が違っていたら申し訳ありません)」という言葉に感動しました。以前、医療の場で働いていたとき、そこには治りようのない病気や事情、そして、老いを持った患者さんがたくさんいらっしゃって、そこで私がやっていたことは「それでもハッピーに暮らす」ことを勇気づけることではなく、自分の無力さを嘆くことでした。自分をごまかしていたことにまずは気づくことが出来ました。

午後からは「部活動に活かすアドラー心理学」「新潟の地域活動『ミニ講座』に取り組んで~私たちにできること~」をお聞きしました。部活動にアドラー心理学を活かされている山本先生のお話は、笑いあり涙ありのお話で、中学という多感な時期に山本先生のような素晴らしい先生に出会えた生徒さんたちの幸せと御活躍に胸がいっぱいになりました。新潟のミニ講座のお話では、新潟のアドレリアンたちが指導者から教えてもらうという立ち位置から、自分たちが「ミニ講座」を行うという立ち位置に成長していく様子をお聞きし、現在私が仕事で直面している課題と重ね合わせて勇気をいただきました。それから野田先生の講演『Passage Plus とエピソード分析』で、先生の説明を聞きながら、あらためてアルゴリズムの図を拝見しました。日本中でエピソード分析がなされ、一人ひとりが自分の「取扱説明書」を手に入れ、よりハッピーに暮らしていくのを想像して、とてもワクワクしました。

余韻に浸る暇もなく、家事に育児にと大忙しの日常に戻って、この参加録を書いている今、総会参加から3週間が過ぎました。私はこの3週間、自分が自分ではないような言動をたくさんしました。何個かをここに書いてみます。

まずは、市役所に育児サークルの登録をして、子どもを遊ばせながら体操やおやつ作り、『Passage』を読める場所を押えました。パート先の中学校で先生方に昼休みに貸し出せるように、総会で買った5冊の『Passage』にきれいにカバーをかけました。そして、夫がニュースを見ながら「僕の定年後は年金制度は、どうなってるんだろう?」という私がもっとも苦手とする未来とお金(どちらもよく分からないから怖いのです)に関する話題にも「どうなっとるかは分からんけど、とにかくハッピーに暮らしていこう」と自分で言って自分にビックリしました。なんだか私は魔法にかかったようです。そして、この魔法について考えるとき、必ず思い出すのは全国から集まったアドレリアンたちの顔です。この15年ぐらいの間、「総会って交流会みたいなものかな?」と総会に参加しなかった私は、総会でアドレリアンの仲間の顔を見て、語り合い、まさに交流することで、強力な魔法にかかりました。もちろん、交流だけでなく総会では有意義な発表をたくさん聞くことが出来、総会参加は一粒で二度美味しい経験となりました。

長々と私の初めての総会参加について書きました。もし、これを読まれた方で総会に参加してみたい、アドラー心理学の魔法にかかりたいと思われる方がいらっしゃったら、とてもうれしいです。最後になりましたが、総会をお世話してくださったみなさまを始め、全国のアドレリアンのみなさま、素晴らしい総会を本当にありがとうございました。



【高 幸子 2014年11月7日】