2011年11月18日アーカイブ

子どもの発達と家族の役割

嘱託医をしている通園施設で、定例のミニ講演をした。テーマは「子どもの発達と家族の役割」。


まずは、人はどんな時に幸せか?という話をする。人とつながっている時と自分にできることがあった時ではないか。それは、人間という種の原始からの生き方と関係がある。そして、それらがそのまま子どもが育つときの原動力になる。人とつながっていると感じ、自分にできることがあると思えることが、発達していく上での力になる。それは、障害があってもなくても同じこと。


家族は、一番最初に触れる他者だ。家族とのふれあいから、他者とはどんなものかを知る。人は信頼できると思えるのか?人とは怖いものだと思うのか?また、家族とのやりとりのなかから、他者の中での自分とはどんなものかを知る。自分に何かできることがあるのか?何もできずに依存するだけの存在か?


子どもが、人々は仲間だ、自分には能力があると感じられるような働きかけを「勇気づけ」と言う。「勇気づけあう家族である」ということが、子どもの発達によい影響を与える。


ここまでが総論。ほとんどアドラーだね。


家族の中できょうだいの役割はなんなのか?障害を持つ子がいるために、他のきょうだいに辛い思いをさせているのではと考えてしまう。きょうだいが特別なのだということをどうやって納得してもらえるのかということに悩む。そもそもきょうだいは、自分の立ち位置を決める基準線みたいなものだ。他者とどんな風に違うのか、どんな風に同じなのかをきょうだいを通じて知っていく。障害を持つ子をきょうだいに持つことは、その子の生き方を豊かにすることだ。


父親の役割はなんなのか?多くの母親が、父親と同じ考えで子育てができないことを悩む。夫婦が同じ考えで子育てしなければならないというのは神話に過ぎない。そもそも、男と女は生理的に異なっている。その特性を生かした関わり方をしたほうがいい。夫婦だから同じように考えるものだと思わない。せっかく子どもにとっての他者が別々に二人いるのだから、違う存在であることを受け入れると、豊かさが生まれる。違う関わり方をするふた親から、子どもはさまざまな人との関わり方を学ぶことができるようになる。


質疑応答も含めて、概略こんな風な話をした。話したり、質問に答えているうちに、自分の考え方がまとまっていく。こうやって、あたらしいテーマを与えられてお話しすると、自分にとってもいい勉強になる。


【高柳 滋治(北海道) 2011年10月13日】