2012年5月25日アーカイブ

5月20日日曜日、岡山市の国際交流センターで、第9回中国地方会が開催されました。
他地区からの参加も含めて53人が集いました。


テーマは昨年に引き続いて『アドラー心理学の基本前提の理解と伝達』です。今年は中国地方区内の5つの自助グループが、小学校高学年以上の子どもたちに基本前提をわかりやすく伝えることを目標にして方法を研究し、発表しました。


午前中は4つのグループが発表し、それぞれの発表に対して中島弘徳指導者がコメントをされました。


岡山市の「ほどほどの会」からは山本卓也さんが、アドラー心理学の5つの基本前提を説明する、スライドを使っての講演を発表しました。アドラー心理学の基本前提が日常的な事例とともにコンパクトに説明されていました。


倉吉市のグループは、「高校3年生のロングホームルームで『人生は運命に定められているか、それとも自分で決められるか』をテーマにしたグループ討論をする」という設定のもと、討論を実演発表しました。このように、討論のテーマの選び方によって、アドラー心理学を知らなかった人が、アドラー心理学の提案する生き方について考えるきっかけができることになるかもしれないと思いました。


浅口市のグループ「あるふぁの会」の発表は、人形劇を使って小学校高学年の子どもたちに「目的論」を伝える試みでした。目標は「目的論」を伝えることですが、この発表を見て感じたのは、困ったときにどうしたら解決にむかうかの知恵を、具体的な形でもらえた、ということでした。


個人的な感想ではありますが、アドラー心理学と初めて出会うときには、むしろこんなふうに実際に役に立つ知恵の形にしたお話が聞けたら、「もっと知りたい!」と思ってもらいやすいのではないかしらと思いました。


島根県のグループからは、少人数のお芝居で「仮想論と目的論」を伝える試みの発表でした。お芝居の中で、学校の先生とアドラー先生が会話をする場面があって、そこでのアドラー先生のセリフはアドラー自身の言葉でできていました。するとアドラー先生のセリフ部分だけ会話言葉とは違う口調になります。そのせいか、返ってアドラーの言葉が強く印象に残りました。中島指導者から「アドラーの言葉を身につけて実践することは、アドラー心理学を伝えるのによい方法だと思います」とのコメントがありました。人としてのアドラーはすでに亡くなっていますが、その言葉はこうして生きて伝わっていくのですね。


午前中の最後に、「ガハク」こと松村宏さんのオリジナル紙芝居の上演がありました。この地方会のための書き下ろし(?)作品は、感情についての話で始まり、最後には「『競争』と『協力』の二つの生き方があるけど、あなたはどっちを選びますか?」というお話に到達します。基本前提の言葉を使わずにアドラー心理学の理論と思想を紹介していて、日常生活に役立つ考え方をすんなりと伝えてくれるところがすばらしいと思いました。


「アドラー心理学を伝えるツールは私たちがすでに知っている方法の中にたくさんあるんだと思いました。人形劇や紙芝居のような方法を使うことで、より広めやすくなるのではないかと思います」と、中島指導者がコメントしておられました。


午後は、「おとぎ話を基本前提で読み解く」というワークをしました。広島のグループが研究された方法です。広島のグループによるデモの後で、日本の昔話を少しづつ読み、書いてあることを、アドラー心理学の基本前提を通すとどう解釈できるかをグループで考えました。各グループをベテランのアドレリアンがリードし、中島さんと山本さんがフロアーをまわって、ときどき考えの活性になる仕掛け花火のようなアイデアを置いていってくださいました。


中国地方区の竹崎理事は、「基本前提を理解することで、自助グループでだけでなく一人でいるときも、自分のアドラー心理学の実践をチェックできるようになる」と、地方会で基本前提を学ぶことの意味について語っておられました。


アドラー心理学を学んでいると、いつか必ず5つの基本前提と出会います。これらは、例えばパセージテキストに書いてあることの理論的な裏付けとなったりしているので、アドラー心理学をしっかり勉強するなら知っているべきだと思いますし、知っていると、困ったときに自分の行動などを理解する上で役に立つことも多いでしょう。


例えばある言語を習うときに、単語を知ってそれを例文で使いこなす練習は、練習としては意味があると思います。が、単なる知的趣味か研究のためでなければ、実際に使って、役にたってこそその言語を学ぶ意味が本当にできるのだと思います。同じように、例えば自助グループなどで事例が出たときに、基本前提に照らして考えることで問題が解決に近づくとすれば、そのときにこそこの地方会で学んだことが意味を持ってくるのだろうな、と思いました。


また、アドラー心理学の理論のもう一つの切り口、つまり、人がライフタスクを解決しようとして行動を起こす、というダイナミックな面と基本前提とを一緒に考えることで、アドラー心理学が役に立つ場面を一層広げることができるかもしれないと思いました。さらに、理論面だけでなく思想面については今後どのように取り組んでいかれるのかも、楽しみに思いました。


たくさんのひとにアドラー心理学を知ってもらい、一緒に学ぶ仲間が増えるのはとても嬉しいことです。今回の中国地方会は、そのための様々なアイデアを実現しました。いろいろな職種や立場の人々がそれぞれの個性を活かしながら成り立っているのが日本アドラー心理学会の特徴ですが、そのリソースが十二分に発揮された会だと思いました。


【大竹優子 2012年5月25日】