2017年3月 8日アーカイブ

アドラー心理学の普及に関して

書籍『嫌われる勇気』がベストセラーになり、「アドラー心理学」の名前が日本中に知れ渡るようになりました。この波に乗らんかなとばかり「アドラー」と名がつけば、なんでもアリというような風潮も見られるようになり、「アドラー家計簿」「アドラーダイエット」「アドラーおかたづけ」など、もう目を覆いたくなるような本も見かけられます。


自助グループにお見えになる方で最初のアドラー心理学との出会いが書籍の『嫌われる勇気』という方々がおられます。本を読んだあと、インターネットで探し回って(それこそたくさん調べたそうです)学会ホームページに辿りついたり、自助グループを見つけてお見えになられました。その後も熱心に自助グループに参加なさるみなさんに共通しているのは「あたたかいものを感じた」「うそがない」「地味だけれどしっかりやってそう」と仰る方が多いように思います。一方で、その後はパッタリという方々もおられます。パッタリ系のみなさんは、パセージ(*)中に貧乏ゆすりをされたり(笑)、「リーダーがこたえを言わない」とイライラされたり「声かけより親側の構え」なんて話がでると、イヤーな顔をされたりなさっていました。


健康法やダイエットでも「これさえやれば」のようなものが流行ったり、二番煎じが出てきては消えの繰り返しの世の中ですが、ここ数年はアドラー心理学がそんな扱いをされていたのかなと思います。自分が楽になるために課題を分離したままにするとか、個人の主体性で(周りへの影響を考えずに)なんでも決めちゃってもいいんだー、そういう心理学あるんだー等と、とても安易にうわべだけの情報を持ち帰り、自分の解釈で実践し、失敗してしまって、別の心理学に飛びつくというのが現在の状況のように思います。


私は、本当にどうしようもなく動物的で競合的なので、アドラー心理学に出会って、マシな人間になるための歩みが始まったと思っています。その歩みは、1人ではないので、こわくないし、楽しいです。一方で仲間と折り合い擦り合う場面も多くあるので、話を聴いたり、妥協案を考えたり、お伝えのしかたを工夫したり、とパセージや講座のテキストを書き写したり、読み返しながら、アドラー心理学の実践を頑張っています。歩みの先には、素晴らしい先輩がおられるので、困った時は下を向かずに、前方の先輩の背中を見て真似たり、懐に飛び込んで直接ご指導いただいています。


健康だって、これさえやればの特効薬はなく、コツコツとした毎日の積み重ねで手に入れることができます。一度、健康について真っ向から向き合った人はそれがわかると思います。アドラー心理学についても同じで、本当に親子関係をなんとかしたい、人々と幸せに暮らしたいと、人生の諸問題に真剣に向き合ってきた人が、アドラー心理学に触れたとき、アドラー心理学の素晴らしさ、実践することの辛さも楽しさもわかるのだと思います。


ですから、正しいアドラー心理学を伝承していくためには、アドラー心理学を触れる(さわれる)場所があること=自助グループが全国各地にあることしかないと思います。そしてその場所で、メンバーが真剣に悩み、考え、意見交換しながら、みんなで成長しあうことを一緒に体験し、その体験をそれぞれの現場に持ち帰り、実践して、いい相互作用が生まれる、そんな場所を1つでも多く増やしていくことかなと思います。


ここ数年で、リーダー養成講座では私を含めて、毎年パセージリーダーが誕生しています。パセージを開いて、自助グループができて、アドラー心理学の伝承する基地局を仲間と一緒に育てながら、私ができることをしていきたいと思います。


もし、「アドラー心理学」ってどんな心理学なの?と興味をもたれた方、本やテレビ、講義からアドラー心理学を知った方は、生の学習グループにおいてください。現場で共に学んでいただけますと、アドラー心理学を「実践する」ことのあたたかさや楽しさをおわかりいただけると思います。健康の素晴らしさが本でわかっても、自分が健康でなければ意味がありません。コツコツと体を動かすことから健康への第一歩が始まります。自助グループはそんな場所です。みなさんと共にコツコツと学んで、アドラー心理学を実践していけたら嬉しいです。ご興味のある方、ぜひお待ちしております。


*パセージ=アドラー心理学にもとづく育児学習プログラム


【岡山恵実  2017年2月28日】