いまさらながらのICASSI報告

もう2ヶ月過ぎようというのに,7月24日~8月5日までスイスで開催されたICASSIに参加したのでご報告をいたします.
何度か書くことを試みたのですが,本日やっと最後まで書けました.
日本からは,1週目に私を含めて4名,2週目に3名が参加しました.


1.クラスさまざま
私は,1週目午前中はグループプロセスのクラスを,午後は,セルフアウェアネス(自己覚知とか訳されます)のクラスをとりました.

ここでは,強烈だった午後のクラスをご紹介します.私は,崩壊したクラスというのをこれまで体験したことがなかったのですが,ほとんどクラス崩壊状態になってしまったクラスでした.もっとも,私の英語の力の限界のせいもあって,本当に何が起きていたのか,十分把握仕切れないままではあります.ですが,時間外に他の参加者に尋ねても,尋ねたどの参加者も,何を目指して何をやっているのかがわからないと同じ感想を持っていました.

講師は,いろいろな教材を私たちにくれましたが,それがテーマとどのように関連するかの説明はなく,また,行ったアクティビティのシェアということもなく,私たちは,講師の指示するアクティビティを行う,あるいは,講師の話を1時間聞き続けるという1週間でした.

参加者のほうから,クラス運営をもっと構成的に行ってほしいことは伝えられましたが,要望は,どうも講師の意に沿わなかったみたいで,その日はその後ずっと講師の意見を聞くことになりました.講師の考えは参加者を納得させるものではなく,参加者はいらいらするか,お互いの顔を見合わせて,「しょうがないよね」といった目配せをして終るというような状況でした.結局,途中から来なくなってしまった参加者もいました.

このクラスに参加してよかったことの1つは,日本のアドラー心理学会の説明を十分ではないですが,参加者にできたこと.その講師は,日本にとても関心があった様で,日本のアドラー心理学会のHPを印刷してきていて,その説明を私に求めたのです.2つ目は,過去の興味深い論文をくれたこと.野田先生の英語論文もクラスで配られ紹介されました.講師は野田先生にとても関心があるようでした.3つ目は,ジャーナルを書くようにここでも進められたこと.講師は,勿論ジャーナルを書く目的も,書くルールも告げませんでしたが,私の方は,改めてジャーナルを書くことを考えるよい機会になりました.最後に,反面教師としてとても参考になった体験になりました.

2週目は午前中アートセラピー,午後は,イボンヌのライフスタイル分析のクラスをとりました.
アートセラビーはとても穏やかなクラスで,楽しく参加できました.シェアリングの時にもライフスタイルを意識した質問が,講師から問いかけられていたのをとても印象深く感じました.ライフスタイル分析で問われる「世界は..」のあとの言葉をそれぞれが告げ,その後に描かれた絵とつなげて,再び参加者に問いかけられたりしました.そのため,日を追うごとに,その人の中でライフスタイルの解釈が深まっていくのが感じられました.講師からのオーダーに対する動きから,みなで,その人の兄弟順位を当てたりもしました.


2.イボンヌ
イボンヌはすばらしかったです.野田先生は,ほんとうに世界水準ですばらしい先生を日本に呼んでくださったんだなあと改めて感謝しました.日本で行ったワークショップとまったく同じことをしたのですが,やはり名人芸です.

ある日,アメリカ人がカウンセラー役になって,イギリス人がクライエント役になって,ライフスタイル診断のデモが行われましたが,ほとんど分かりませんでした.二人ともネイティブの人たちが話す言葉はつながっていて早くて,私にはよく分からなかったのです.

翌日のセッションの始めのアイスブレイクに,「よかったこと」を各自2つ言うというのがありました.私は,1つは,英語がよく分からないで逃げ出したくなるけれど,最後までエスケープしないでがんばってきていること,昨日は,分からなくて落ち込んだけど,気分転換を上手に出来たことを伝えました.

これに対してイボンヌは「よくわからないセッションをして悪かったわ」みたいなことを皮肉っぽく言いました.私は,私自身の失敗を恐れ,思ったことを言わない傾向,自分ひとりがわからないのだから,自分が我慢すればよくて,他の人に迷惑をかけたくない気持ちがあることを伝えました.するとイボンヌは「わからないということを伝えることは大事なこと.1週目も英語があまり話せない人がいたけど,みんな身振りも交えてお互いをわかる工夫をした.わからないと伝えられることによって,みんながあいまいにわかっていたつもりになっていたことが,より明確になってくる」というようなことを教えてくれました.涙があふれました.

私は,仕事の都合から,ICASSI終了の1日前に帰らなければなりませんでした.そのため,今日のクラスが最後であることを,この日クラスも終るころになってイボンヌに伝えました.私は,早めに伝えなかったことについて,イボンヌから何かいわれるんじゃないかと思っていました(どこまでも被害的).イボンヌは,すぐに参加者に対して,「淑美のストレングスをみんな言って,それから,誰か,このカードにそれを書き取ってくれない」と指示しました.参加者もすぐにこれに応じて,あっといういまにたくさんの私のストレングスを途切れることなく言ってくれたのです.イボンヌはほんとにわずかの時間(もうクラスが終了する1,2分前の)に見事に,私には力があること,そして,人々は仲間であることを,私に行動で伝えたのでした.私はまた泣いてしました.


3.イベントから
私にとって印象深いイベントは,2つありました.1つは,スイスのナショナルデー,もうひとつは,夜に行われたアドラー・カフェでした.

スイスのナショナルデーの日は,皆国旗を家々に掲げて,夜には,あちこちで花火が打ち上げられていました.家々に人が集って,ガーデンパーティも催されていました.サマータイムの時期で日が長いことも手伝って,私たちも古城へ向かってみんなで歩きました.そこは高台になるので,周辺の街の様子が見えるのです.スイスの人たちのお祝いの日にスイスにたまたまいることができて,一緒にお祝いに参加でき,とても嬉しい気持ちになりました.同時に日本のナショナルデーのことも思いました.「建国の日ってうれしくてお祝いしたくなって当然なのに,いつの間に私たちは,どの休日もただのお休みのようになってしまったんだろう.」と思いました.国があることのありがたみを忘れてしまっていることをスイスの人から教えられました.

アドラーカフェは,夜の時間に催されたイベントの1つです.今年は,「Social Equality」について話あいました.その言葉を説明するキーワードを3つ(多分3つくらい)あげるのです.それによって,「Social Equality」とは何かを共有しようというのです.面白い進め方でした.まず.兄弟順位ごとに別れてグループを作ります.各グループの中でも,小さいグループを作ってまず話し合い,それらを統合してグループの意見を発表していくのです.このひとつの言葉をめぐって,こんなにみんな説明に夢中になるとは思いませんでした.自分のあいまいさが明らかになり,それぞれの差異が見えてきてとても面白い時間でした.私は長子のグループにいたのですが,長子グループを仕切っていた長子さんがとても素敵に仕切っていて,うっとりしてしまいました.見事な仕切りは,仕切られる方も気持ちがよかった.大竹さんから「日本の誰かに似ていない?」とささやかれ,二人で,その日本の誰かを思い出し,またまたうっとりして見とれました.


4.おしまいに
行けばなんとかなるというのは,私自身は,ちょっと抵抗があります.行ってもなんともならないことはならないのです.やはり備えはあったほうが,より実りは多いだろうと思います.ですが,行かなければなんともならないのも一方で事実です.行くからこそなんとかするのだろうと思います.そうすると思いもかけないことが起こります.今年私たちは,Let it beの楽曲に乗せて「魔法にかかろう,ICASSI」と歌いました.来年はリトアニアです.リトアニアの方はとても穏やかで,母国語がリトアニア語だから,英語はゆっくり話してくださいます.同じアドラーの言葉を語る人たちが,世界にこんなにいるのだと知ることはとても励みになると思います.私は,来年は,すでに仕事が空かないのでいけないことがわかっているのですが,だからこそ,日程がぽっかり会う方は,それは,アドラーが自分を呼んでいるのだと思って是非参加されることをお勧めしたいと思います.

 

【遠藤 淑美 2011年9月25日】