2014年5月アーカイブ


 先月の例会は、「勇気づけの言葉集」を使って相手を勇気づける視点を学ぼう、というテーマでした。最初に、最近気になったエピソードをそれぞれに出してもらい、そのあと「言葉集」の中にある「勇気づけの言い方」を参考に、エピソードの中の相手を勇気づけることばを作ってみることにしました。

 あがってきたエピソードは、どちらかというとマイナス感情のともなったものが多かったです。マイナス感情が起きるのは、相手が「不適切な行動」をとっているからで、だとすると「不適切な行動をとる人」というのは「勇気をくじかれているからそうする」わけで、ではどういうふうに「勇気づけ」をしたらいいか、と考え始めました。

 ところが、これが全くうまく動かない! メンバーさんたちはそれなりにベテランですので、この全くうまく動かない中からも、それぞれに自分なりの気づきをしてくださったようですが、司会としては自分の見通しの甘さにかなり凹みました。

 なぜうまく行かなかったと考えてみると、そもそもマイナス感情をともなうときの仮想的目標は「競合的」であることがほとんどです。目標が競合的であるときに「勇気づけ」の言葉は使えませんし、たとえ使ったとしてもそれは下心たっぷりのいやみな言葉にしかなりません。

 いくらブイヨンスープが上等でも泥のついたままのニンジンを放り込んだらだめです。きちんと下処理をしたニンジンを煮込んでこそ、おいしいキャロットスープができるのですよね。

 というわけで、5月は、基本にもどって「エピソード分析(きらきら探し)」をしたいと思います。ただ分析するだけでなく、その仮想的目標が「競合的」か「協力的」かを見極め、「協力的目標」へと語りなおせるところまでいければいいなと思っています。

 4月例会で不完全燃焼のみなさま、および、パセージプラスに興味のあるみなさま、例会へのおいでをお待ちしています。


【I.M (三重)2014年5月】

勇気づけのクリニックをめざして

今年度初回の職員会議。初心に立ち返って、はるこどもクリニックの理念を語る所から始めた。

この4月から看護学校卒業したての新人看護師を受け入れている。新人看護師には基礎研修が必修化されている。技術研修は、現場で着実に業務をこなすことで進めていける。技術だけではなく、理念的な研修も必要とされている。曰く「看護職員としての必要な基本姿勢と態度についての到達目標」。クリニックの理念に加えて、看護に関しての考え方、看護倫理、患者さんのニーズのとらえ方、患者さんに対応するときの態度など学んでもらうことは多い。これらは、何も看護師に限ったことではなく、クリニックのスタッフ全員に身につけてもらいたい内容だ。そこで、今年は時間をとって、月2回全員参加の学習会を計画している。今回はその第1回でもある。

まずは、クリニックの理念の3本柱を語る。開設以来掲げてきた文言を若干変更している。
 ①子どもたちのこころとからだの健康の砦に
 ②診察室で待つだけではなく地域とともに
 ③協力・協働の文化を広める

あらためて、私が考える理想の医療像を語る。はるこどもクリニックを『勇気づけ』のクリニックにしたい。病気を抱えた子どもたちとその保護者がやってくる。病気を治療することはもちろんのこと、病気の療養・看護に向き合うための前向きな力を引き出すことを大切にしたい。

看護は、全人的なアプローチだという。うちのクリニックが目指すのは、まさにこの全人的なアプローチだ。だから、うちのクリニックの理念を語ることが、看護の理念を語ることにもなる。すなわち、治すことと同時に癒すことを大切にしたい。さて、癒しとは何か?それは、アドラー心理学の中に答えがある。いつでも主体者であること、問題の原因を追及するのではなく解決をさがすこと、自己執着からのがれて共同体感覚に目覚めること。

病気を抱えることは、課題を抱えて生きる人生そのものだ。人はいつも順風の中を進めるとは限らない。逆風が吹いたとき、問題が起こったときこそ、その課題を乗り越える力が問われる。それが、共同体とつながっていると言う感覚すなわち『共同体感覚』だ。その方向に向かうように援助するのが『勇気づけ』。だから、うちのクリニックは、『勇気づけ』のクリニックを目指しているのだ。


【高柳 滋治 2014年4月17日】