第27回国際個人心理学会(ミネアポリス)2日目

プレコングレスが終わって、総会の第一日目にはNさんの発表が終わりました。2日目の午後からは、パネルディスカッション「勇気づけによって実践者を育てるグローバルな視点」です。

 

私は、参加できなくなったK(娘)の代わりに発表することになりました。Kの話は、自分自身がどのように育ったのか、また高齢者施設の作業療法士として、アドラー心理学に基づいた支援をどのように展開しているかについて、昨年の中国地方会で語られたものでした。彼女が発表した実践内容を軸に、日本アドラー心理学会が選択し続けた基本路線(1日常生活での実践、2非専門家によるグループ活動、3基本前提の尊重)による次世代の実践者の育成について話しました。

 

座長のRebecca LaFountain さん(国際学会副会長:アメリカ)は、

「まさしくアドラーが願ったこと。アドラーは、『アドラー心理学』ではなく、『アドラー心理学に基づいた実践』が重要であると考えていた」

とおっしゃいました。

 

発足して3年目だという台湾アドラー心理学会の方が

「台湾では、今アドラー心理学は注目されているけれども、そのうち関心が低くなるのではないかと気がかり。しかし、この話に感動した。アジアで日本と台湾が交流できればよいと思う」

という感想がありました。アメリカの方からは

「この方法で次世代が育つのは、どういう理由と考えるか」

という質問がありました。私は

「それは、日本アドラー心理学会の基本路線があるからです」

と答えました。

また、

「なぜ彼女は、子どものころにアドラー心理学に基づくワークショップに参加するなどの活動によって、支援者になることを決心したのだろう」

という問いには、

「それは、彼女にとって楽しかったからです」

と答えました。

英語に不自由だっただけに、端的な(二語文レベルの)会話がかえって通じたのでしょう。質問者はうんうんとうなづいて、手で「OK」と示してくれました。

 

次に、地元ミネアポリスのアドラーグラデュエートスクールで教えているJanaさんが、ご自身がグラデュエートスクールでどう育てられ、今、何を大切に次の世代を育てているかについて話されました。グラデュエートスクールでは、子犬を育てるように、あたかもそれを自分で決心したかのように導かれたと言います。不安で自信がなかったJanaさんに「いつから自信をもつことにするの?なんだったら今日からはどう?」というように。そして修士課程ではライフスタイルとライフスタイル診断を学ぶために、まず自分自身のライフスタイルについてのトレーニングがなされます。2人の学生に指導する先生が1人いて、学生同士が教えあう形で学習が進んだとのこと。今尊敬する先生方と母校で同僚として働けることを幸福に思うと話しておられました。

 

まったく違う環境でアドレリアンが育つ話でした。しかし、それらはとてもよく似ていました。

 

参加していたアメリカの方が会場から、

「どちらの話も、相手のもつものをそのまま使う合気道のようだった」

と感想を話されました。

 

セッション全体はとてもフレンドリーでした。

 

わたしは、心の中ではこんな気持ちでした。

「ねえねえ、聴いてください。日本にはアドラー心理学で臨床家を育てる大学はないのです。けれども、だからこそ日本アドラー心理学会の基本路線が生かされて、時間をかけて、けっこういい方向で次世代を育成していると思うんですよ」

と。

 

もちろん、日本のやり方が唯一の正解であるとは思いません。アドラー心理学は様々な国でそれぞれの発展をするのでしょう。なぜなら「何が与えられたかが問題ではない」からです。けれども、アドラー心理学である限りには、アドラーの主張と照らし合わせてどうかという検討は絶えずなされなければならないと思います。

 

わたしにとって、初めての国際学会での発表でした。そして、英語を30分も話し(正しくは、読み)続けるという人生初めての仕事でした。にも関わらず、ほとんど緊張しないで、どの練習のときよりも落ち着いて話すことができました。座長さんをはじめ参加されたみなさんの創るあたたかい雰囲気が会場いっぱいにあって、終始わたしを勇気づけていました。さすが、国際的なアドレリアンの集いです。

 

発表を提案したり後押ししたり、英訳を手伝ってくれたり、口演のトレーニングをしてくれたりするたくさんの友人の助けを得て、娘の素直な実践報告をお伝え出来たことはとても幸せなことでした。

 

夜はレセプションに参加しました。ミシシッピ川のナイトクルーズです。みんなで持参したにゆかたが人気で、あちこちから beautiful! と声をかけられたり、写真を撮られたりしました。

 

こんなふうに国際学会の2日目が終わりました。

 

【長谷川理恵(鳥取) 2017年7月】