本日のかわし

今朝、夫と朝ごはんを食べながらおしゃべりしていて、チベット瞑想のお話になった。 
自分が死ぬ寸前にする「ポワ」という瞑想について、 

「その瞑想をすると、頭頂から魂がすぽーんと抜けて、それを阿弥陀さまがキャッチしてくださるんだって」 

と話して、 

「でも、突然の死とかあるじゃない。交通事故でいきなり死ぬとか。そういうときって、ポワするひまがあるんだろうか?」 

と言うと、夫が、 

「そんなひまないよ。どんな死に方でも、死ぬ寸前に瞑想なんかできないよ」 

と言った。 

ムキッ! 

となった私は、対処行動を繰り出す。 

「いや、ちゃんと練習しておけばできるらしいよ」 

「どうやってそれがわかるの?死んだあとに」 

さらに、ムキムキッ!! 

頭の中の考えは、「あっ、また賢い私におバカなあなたが意見したわね!」だ。 
しかも、これ、権力争いの入り口だぞ!と気づいた。 

自分の冗長性にあきれる。 

さて、これをどうかわすか、一瞬考えた結果、こう答えた。 

「うん、あのね、FAX届くの。あの世から」 

「みゅーって?」 

いいなあ、こういうときの関西人、ちゃんとのってくれる。 

「そうそう、みゅーって。で、しっかり練習したおかげで、ちゃんとポワできました。ありがとうございます!皆さんもがんばってくださいって、書いてあるの」 

夫、たいへん嬉しそうに笑う。 
このあたりで、私は元の冷静な状態に戻った。 

「結局、どう死に建設的に向き合うかって話だよね。実際死んだ後どうなるかは、死んでみないとわからないけど、どう生き、どう死ぬかって話なんだと思うんだ」 

夫、深くうなずく。 

おお~良い会話で終わったぞ。 

本日のかわし、どうやら大成功。 

こうして私のずるがしこい力は、また少し強化されるのであった。


【酒井朋子 2017年5月】